はじめに
今回は歌舞伎『勧進帳』を解説します。
『勧進帳』解説
登場人物
義経(判官)…源頼朝の弟。頼朝に追われている
弁慶…義経の側近。知性と肉体を兼ね備える
富樫左衛門…加賀の国の関を守る幕府の役人
あらすじ
追われる義経
義経は兄・頼朝の嫌疑を招き今は追われている身です。義経は弁慶を含めた従者たちを連れ、山伏姿となって陸奥の国へ落ち延びようとしています。
富樫左衛門の関
義経達は富樫左衛門の守る関で呼び止められます。弁慶は、自分たちは東大寺建立の勧進(寄進)のために諸国を巡っている山伏だと主張しますが、富樫はそれならば当然持っているはずである勧進帳を要求してきます。
弁慶は空分の巻物を堂々と読み上げます。これによりいったん関を通れそうになりますが…
歌舞伎史上に残る名シーン
富樫は義経の姿を見て、一行を再び呼び止めます。弁慶は否定し続けますが、富樫は一向に疑いを解きません。
ついに弁慶は義経を打ち殺そうとします。それを見た富樫はついに疑いを解き、関所の通行を許可します。
何とか窮地を乗り越えた義経一行は、陸奥を目指して旅立っていくのでした。
魅力
よく古典的な作品というのは現代でアレンジがたくさん出ている分、いざ観てみると既視感があって退屈してしまうことも少なくありません。
ただ、この勧進帳は別です。展開が非常にスリリング。弁慶の名演技によって一度は難所を突破できたかに見えますが、敵も一筋縄ではいきません。再び一行は窮地に陥ります。
そこで弁慶が取る手段というのも驚きです。主人を痛み付けるというのはよほどの信頼関係がなければ出来るものではありません。この作品を観た後、「自分だったら同じことが出来ただろうか?」と考えられずにはいられません。まさに名作中の名作。
DVD市川團十郎・海老蔵
参考文献
この記事は『あらすじで読む名作歌舞伎50選』(利根川裕)を参考にしています。
観劇の前や教養として知っておきたい方には最初の一冊におすすめです。