はじめに
今回は百人一首No.57、紫式部の歌である「めぐりあひて見しやそれともわか間に雲がくれにし夜半の月かな」を解説していきます。
『めぐりあひて見しやそれともわかぬ間に雲がくれにし夜半の月かな』解説
作者は?
作者は紫式部(970?〜1019?)。『源氏物語』が有名な彼女ですが百人一首にも歌が掲載されています。
紫式部と引き合いに出されることの多い清少納言の歌はNo.63に収録されており、紫式部の娘である大弐三位の歌はNo.58に収録されています。
意味
「めぐりあひて見しやそれともわかぬ間に雲がくれにし夜半の月かな」の意味は以下のようになります。
「久しぶりにめぐりあって、その人かどうか見分けがつかないうちに、雲間に隠れてしまった夜半の月のように、あの人はあわただしく姿を隠してしまったことですよ」
品詞分解
①めぐりあひて
めぐりあひ…ハ行四段活用の連用形
て…接続助詞
②見しやそれとも
見…マ行上一段活用の連用形
し…過去の助動詞の連体形
や…係助詞
それ…代名詞
と…格助詞
も…係助詞
③わかぬ間に
わか…カ行四段活用の未然形
ぬ…打ち消しの助動詞の連体形
間…名詞
に…格助詞
④雲がくれにし
雲がくれ…ラ行下二段活用の連用形
ひ…完了の助動詞の連用形
し…過去の助動詞の連体形
⑤夜半の月かな
夜半…名詞
の…格助詞
月…名詞
かな…終助詞
背景
この歌は紫式部が久しぶりに幼友達と再会した際に、あまりにも早く帰ってしまったので読んだもの。
紫式部は結婚前の二十代なかばに、父が赴任したのに伴われて任国に下りました。紫式部自身は一年後には一人で帰郷してしまいます。そこで出来た友人が少しだけ京に寄った際にあまりにも早く帰ってしまったので、そのあっけなさやもの寂しさを流れる雲と月と景として鮮やかに詠まれています。
参考文献
この記事は『シグマベスト 原色百人一首』(鈴木日出夫・山口慎一・依田泰)を参考にしています。
百人一首の現代語訳、品詞分解も載っています。勉強のお供に是非。