百人一首No.100、順徳院の和歌『ももしきや古き軒端のしのぶにも』解説~意味・現代語訳、品詞分解・修辞法

はじめに

今回は百人一首のNo.100『ももしきや古き軒端のしのぶにもなほあまりある昔なりけり』の解説をしていきます。

『ももしきや古き軒端のしのぶにもなほあまりある昔なりけり』解説

作者

この歌の作者は順徳院(1197~1242)。第八十四代天皇です。

朝廷の権威回復を願い父である後鳥羽院とともに承久の乱を起こしますが、結果は鎌倉幕府の圧勝。敗れた順徳院は敗れて佐渡に流されました。在島二十一年で崩御しました。

意味・現代語訳

『ももしきや古き軒端のしのぶにもなほあまりある昔なりけり』 の意味は以下のようになります。

「宮中の古びた軒端の忍ぶ草をみるにつけても、しのんでもしのびつくせないほど慕わしいものは、昔の御代なのだった」

背景

ここで表現されているのは皇室の権威の衰えにたいしてのやりきれなさ。

この歌が詠まれた当時、政治上の実権はすでに鎌倉幕府に移っていました。そうしたときに、順徳院の目には宮中の古い建物に生えている忍ぶ草が目に入り、そこに宮中全体の衰退が感じ取られたのではないでしょうか。

尚、彼の父、後鳥羽天皇も百人一首No.99に皇室の衰退を嘆いていると感じられる歌を残しています。

後鳥羽天皇

品詞分解(修辞法)

①ももしきや

ももしき…名詞、「内裏」「宮中」の意

や…間投助詞

②古き軒端の

古き…形容詞ク活用の連体形

軒端…名詞

の…格助詞

「古き軒端」とは古びた皇居の軒の端のこと

③しのぶにも(掛詞)

しのぶ…名詞、「忍(草)」という名詞と「しのぶ」という動詞の掛詞となっています。名詞の「忍(草)」とは羊歯(しだ)類の一種で、邸宅の荒廃を象徴する表現としてよく用いられ、ここでは皇室の権威が衰退したことも表しています。動詞の「しのぶ」の方は「昔を懐かしく思う」という意味です。

に…格助詞

も…係助詞

④なほあまりある

なほ…副詞、「やはり」の意

あまり…名詞、「しのんでもしのびきれない」の意

ある…ラ行変格活用の連体形

⑤昔なりけり

昔…名詞、皇室の栄えていた過去の時代

なり…断定の助動詞の連用形

けり…詠嘆の助動詞の終止形

順徳院の眠る大原陵

参考文献

この記事は『シグマベスト 原色百人一首』(鈴木日出夫・山口慎一・依田泰)を参考にしています。

百人一首の現代語訳、品詞分解も載っています。勉強のお供に是非。