マルモッタン美術館の作品解説~モネの『印象、日の出』を解説

はじめに

今回は、マルモッタン美術館所蔵、モネの『印象、日の出』について解説します。

モネとは?

モネとは?

クロード・モネとは印象派の代表的な画家です

印象派とは?

「印象派」とは19世紀後半のフランスで始まった芸術運動です。その中では風景の一瞬の移り変わりを捉えることを目指しました。

印象派の特徴として、歴史や聖書、神話というより、日常の一場面がモチーフ(題材)となり、さらに、浮世絵の影響を受けているため、斜めからの構図が多くなっている点が挙げられます

モネと浮世絵

モネは日本の浮世絵を研究しており、『ラ・ジャポネーズ』という作品では妻のカミーユをモデルに『見返り美人』のような構図の絵を描いています

『ラ・ジャポネーズ』(ボストン美術館)

モネの『積みわら』をはじめとした「連作」も、同じ対象を様々な時間や視点からとらえるという点で、葛飾北斎の『富嶽三十六景』から影響を受けていると言われています

『積みわら、夏の終わり』(オルセー美術館所蔵)
『積みわら、夏の終わり』(シカゴ美術館所蔵)
『積みわら、雪と日光の効果』(メトロポリタン美術館所蔵)

ルーアンの大聖堂の連作も同じ点で有名です

『ルーアン大聖堂、ファサード(日没)』(マルモッタン美術館所蔵)
『ルーアン大聖堂、日没(灰色とピンクのシンフォニー)』(カーディフ国立博物館所蔵)
『ルーアン大聖堂、西ファサード、陽光』(ワシントンナショナルギャラリー所蔵)

左右非対称や縦長の構図、描く対象の全体を描かず部分を省略していた点などにも浮世絵の影響が表れていると言えます。

『印象、日の出』解説

どこの美術館にある?

『印象、日の出』を所蔵しているのは、パリ16区にあるマルモッタン美術館です。16区は高級住宅地として名高く、私が行った時も静かで上品な雰囲気が漂っていました。

マルモッタン美術館は他にも、モネの『睡蓮』の連作、ルノワール、そして女性画家ベルト・モリゾの作品も所蔵しています。

モネの『睡蓮』(マルモッタン美術館所蔵)
ルノワール『クロード・モネの肖像画』(マルモッタン美術館所蔵)
ベルト・モリゾの『立葵』(マルモッタン美術館所蔵)

描かれている場所は?

『印象、日の出』で描かれているのは、モネが幼い頃から家族と暮らしていたノルマンディ地方のル・アーヴルの港です。朝もやの中太陽が昇る一瞬の光景を描いています。

ピサロにも描かれたル・アーヴルの港。ル・アーヴルにあるマルロー美術館に所蔵されています。

特徴は?

「印象派」の名前の由来となる

モネの『印象、日の出』は、「印象派」という言葉の元ネタになった作品と言われています

モネを始めとして、ルノアール、シスレー、ピサロ、ドガといった画家達が1874年にパリで展覧会を開催し、モネがこの作品を出品します。しかし、批評家ルイ・ルロワに「単なる印象でしかない」と揶揄されてしまいます。実はこの批判がきっかけで印象派という言葉が使われ始めたと言われています。

「印象派」の特徴

そんな「印象派」の画家達は皆個性に溢れており、絵にも独自の特徴がみられるのですが、共通していたのは描く対象の色は太陽の光によって変わって見える、と考えたことです。彼らが目指したのは自らの網膜に飛び込んでくる一瞬の印象をキャンバスに表現することでした

「印象、日の出」の特徴

印象派以前の絵と比べると輪郭は漠然としています。プッサンやダヴィッドの絵と比べるとその違いは一目両全です。港に浮かぶ船は簡略化され、朝もやの向こうの風景は一筆書きのような粗さです。

『印象、日の出』(モネ、1872年、マルモッタン美術館)

なぜ筆致が荒いかというと、パレットで色を混ぜずにそのまま並べているから。絵具は混ぜれば混ぜるほど暗く濁っていくため、自然の明るさを表現するために色をそのまま並べていると考えられます

このように、太陽の光を構成する七色のスペクトルを重視し、キャンバスにその七色を混ぜずに並べていく手法を色彩分割法と言います。シュヴルールやヘルムホルツによって色彩理論が提唱されており、画家達も理論を絵画に適用していたんですね。

時代背景

19世紀後半は、工業化が今のように環境破壊として問題視されるより「未来を創る」こととして肯定的に捉えられていた時代です。モネの『印象、日の出』でも煙突軍から出たスモッグが画面を白く覆っているがわかるかと思います。もしかしたら輝かしい未来に対しての希望を描いた作品なのかもしれません。他にもただなんと言っても見どころは「印象派」の由来となったモネの『印象、日の出』です。もし良かったら参考にしてみて下さい。

参考文献

画家 大友義博

『一生に一度は見たい西洋絵画BEST100』(大友義博監修)

西洋絵画の初心者はまずこの本から入りましょう。

高橋明也・安井裕雄

『もっとしりたいモネ 生涯と作品』(高橋朋也監修 安井裕雄著)

モネの生涯、交流関係について詳しく解説されています。モネの興味をもって深く知りたくなった人は読んでみて下さい。

西洋美術史の木村泰司

『印象派という革命』(木村泰司)

印象派の画家達について解説。交流関係など、ストーリー性があって読みやすいです。

お土産 Souvenir

モネに関するグッズを張っておきますので良かったらご覧ください

作品集 Collected paintings of Monet

カード集 Postcards

はがせるポスター Poster

マルモッタン美術館 基本情報

アクセス

住所:2,rue Louis-Boilly 75016

最寄駅:メトロ9番線 ラ・ミュエット(La Muette)

開館時間:10時〜18時(月曜日休館)

富裕層が多い閑静な地域です。

チケット

オンラインで、大人10.2ユーロ(2019年、4月時点)です。

ルーブルやオルセーと違い入場に列が出来るほど混むということはほとんどないので、現地購入でも全く問題はありません。

見どころ

なんと言ってもモネのコレクションの豊富さでしょう。

「印象派」という言葉の由来となった『印象、日の出』はもちろん、『睡蓮』の連作など目白押しです。

印象派の女流画家、ベルト・モリゾの所蔵が多いことでも有名です。

『印象、日の出』(モネ、マルモッタン美術館所蔵)
『睡蓮』(モネ、マルモッタン美術館)
『睡蓮』(モネ、マルモッタン美術館)
『ワイト島のウジェーヌ・マネ』(ベルト、マルモッタン美術館所蔵)

楽しんできてください!

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