ジェロームの『ピグマリオンとガラテア』~ピグマリオン効果の元にもなった喜劇?悲劇?

はじめに

今回はメトロポリタン美術館所蔵、ジェロームの『ピグマリオンとガラテア』について解説していきます。

メトロポリタン美術館、Wikipediaより引用

ジェロームとは?

ジェロームとは?

ジャン・レオン・ジェローム(1824-1904)はフランス芸術アカデミーの大御所でしたが今は半ば忘れられた画家。

トルコなど東方を舞台とする歴史画を多く描き、登場する女性ヌードの過剰なまでのエロティック度で知られています。

主な作品

仮面舞踏会の決闘

『仮面舞踏会の決闘』(1857-59年、ウォルターズ美術館所蔵)

カエサルの死

『カエサルの死』(1867年、ウォルターズ美術館所蔵)

指し降ろされた親指

『指し降ろされた親指』(1872年、フェニクス美術館所蔵)

『ピグマリオンとガラテア』解説

ピグマリオンとガラテア

海の泡から生まれたヴィーナス。貝の船に乗って彼女はキプロス島に到着し、人々は彼女を守り神として崇めます。しかし、彼女を女神として認めようとしない一部の女性達にヴィーナスは激怒。ヴィーナスは彼女らを売春婦にしてしまいます。

『ヴィーナスの誕生』(ボッティチェリ、1485-86年、ウフィツィ美術館所蔵)

売春婦と化した女たちを目の当たりにし、女嫌いになってしまったのがピグマリオン。生身の女には幻滅していた彼ですが、芸術家でもあった彼は彫像なら心配なしということで完璧な美女像を作り上げ、彼女と生活を始めます。

『彫刻の起源』(ルニョー、1786年、ヴェルサイユ宮殿)

やがて、ヴィーナス祭の日が来て、ピグマリオンも祭壇へ捧げものに行き、「象牙のような花嫁をください」と一心に祈ります。すると、望みが叶った証拠の炎が三度燃え上がる。

狂喜したピグマリオンは自邸へ駆け戻って彫像を抱きしめます。すると、心なしか温もりが感じられ、触れたところが柔らかく凹むような気がする。キスをすると、乙女は恥ずかしげに彼を見つめ返しました

『ピグマリオンとガラテア』(ジロデ=トリオゾン、1819年、ルーブル美術館所蔵)

その乙女はガラテアと名付けられ、ヴィーナス立会いのもと結婚式を挙げ、翌年には子供も生まれました。

ヴィーナスについてはこちらも参照↓

『ピグマリオンとガラテア』解説

ジェロームによる本作はまさに彫像が変身する瞬間を捉えたもの。柔らかく撓り、熱い血潮を感じさせる上半身とまだ硬く冷たい象牙のままの脚部が好対照をなしています。

画面右上に浮かんでいるのは恋の矢をつがえるキューピッド。ピグマリオンの彫像への恋着は、ヴィーナスの息子であるこのいたずらっ子によるものだったと暗示されています。

『ピグマリオンとガラテア』(1890年、メトロポリタン美術館所蔵)

その下方に立てかけられた仮面はなんとも不気味で、どうにもハッピーエンドとも行かなさそうです。この仮面は古代ギリシャ劇に使われていた悲劇用と喜劇用のマスクとされ、この出来事が悲劇でもあり喜劇でもあることを暗示していると考えられ、画家の冷めた視線を感じさせます。

後ろの棚に置かれているのは当時副葬品と見なされていた人形。わざわざそんなものが置いてあるのは、ジェロームが乙女を死者と見なしているからです。

さらに、注目すべきは神話と異なり、彼女の方からピグマリオンにキスをしている点。ピグマリオンは女に腑抜けにされた男そのものです。

世紀末芸術の一大ブームだったファムファタル、つまり「男を破滅させる美女」がここでも顔を覗かせています。美しい一瞬を描いているように見えて、「ピグマリオンの行く末は?」と心配になってしまいそうな作品です。

世紀末芸術、クリムトについてはこちらも参照↓

ピグマリオン効果とは?

ピグマリオン効果とは、教師や親の期待度が高ければ子供もそれに応えるおいうもの。容姿の良い子に勉強ができる子が多いというのもこの影響かもしれません。

参考文献

中野京子 名画の謎

『中野京子と読み解く 名画の謎 ギリシャ神話篇』(中野京子)

興味を持った方は是非読んでみて下さい!

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