ティントレットの『天の川の起源』解説~ロンドン・ナショナルギャラリー所蔵

はじめに

今回はロンドン・ナショナルギャラリー所蔵、ティントレットの『天の川の起源』を解説していきます。

ロンドン・ナショナルギャラリー、Wikipediaより引用

ティントレットとは?

ティントレットとは?

ヤーコポ・ティントレット(1518-94)とは、ルネッサンス時代の画家。

本名はヤーコポ・ロブスティというのですが、家業が染物屋だったので「ティントレット(染物屋の息子)」が通称になりました。

今回紹介する『天の川の起源』は、神聖ローマ皇帝ルドルフ2世の依頼で描きあげました。アンチンボルドという画家に果物や野菜からなる自分の公式肖像画を描かせたことで知られている変人皇帝なため、本作の仕上がりには特に力を入れたと言われています。

『ウェルトゥムヌスとしてのルドルフ2世』(アンチンボルド、1591年頃、スクロステシュ城所蔵)

『天の川の起源』解説

ゼウスとヘラ

ゼウスとはギリシャ神話の主神たる全知全能の存在。

アトリビュートは鷲。鷲が画面にいるとその男はゼウスだと特定できます。本作では右上にいます。

ヘラとはゼウスの妻。嫉妬深いことでも有名で、ゼウスが不倫した際などは愛人やそのこどもをいじめる話が多いです。アトリビュートは孔雀。今作でも右下に孔雀がいるため女性はヘラだと分かります。

「天の川の起源」はくだらない

ゼウスは人間界を見下ろし、アンフィトリオン将軍の妻アルクメネに目をつけ、夫に変身するなどして彼女を孕ませます。

『天の川の起源』(ルーベンス、1636-37年、プラド美術館所蔵)

助産の女神のヘラへの忠義だてなどもあって、アクメネは苦しみますがなんとか出産。しかし、その後ヘラへの恐怖から母乳が出なくなってしまいます。

それゆえ、ゼウスはヘラを眠らせ、子供に彼女の「不死の乳」を飲ませます。この子供は人間の女から生まれたとはいえ父はあくまでゼウス。半分は神の子であり、ものすごい力で乳を吸います。ヘラは思わず痛さに目を覚まし、ヘラの乳は勢いよく天へ向かって迸り、きらめく星々となりました

『天の川の起源』解説

ヘラは乳房に吸いつく赤子を振り切ろうとしています。左胸から迸った乳はスプリンクラーの水みたいに上空へ飛び散り、いくつもの星へ変わっていき、ついには天の川となります。

やや見えにくいですが、乳は右の乳房からも噴き出し、真下へ向かっています。言い伝えによるとそれは地に滴って白百合となりました。この絵は何らかの理由で下部が切り取られたことが分かっており、おそらくその切除部分には百合の花が描かれていたと考えられます。

『天の川の起源』(ティントレット、1575年、ロンドン・ナショナルギャラリー所蔵)

ベッドの周りを弓矢や網を持つ太った可愛いキューピッドたちが飛び交っています。矢はキューピッドが盲目的に放つ「恋の矢」を示しますが、ここではおそらくゼウスがヘラを罠にかけたことを表現していると考えられます。

右下にいるキューピッドが締めている赤い帯も、本来はヘラのもの。性的魅力を高めるための帯で、ヘラは不実な夫ゼウスの関心を惹くために、わざわざヴィーナスからこれを借りました。

参考文献

中野京子 名画の謎

『中野京子と読み解く 名画の謎 ギリシャ神話篇』(中野京子)

興味を持った方は是非読んでみて下さい!

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