目次
はじめに
今回は百人一首のNo.88『難波江の芦のかりねのひとよゆゑみをつくしてや恋ひわたるべき』の解説をしていきたいと思います。
『難波江の芦のかりねのひとよゆゑみをつくしてや恋ひわたるべき』解説
作者は?
この歌の作者は皇嘉門院別当。十二世紀の人です。
崇徳天皇(No77に歌が収録)の皇后である皇嘉門院聖子に仕えました。
意味・現代語訳は?
『難波江の芦のかりねのひとよゆゑみをつくしてや恋ひわたるべき』の意味・現代語訳は以下のようになります。
「難波の入り江の芦の刈り根の一節ではないが、ただ一夜の仮寝のために、あの澪標のように身を尽くして恋い続けなければいけないのでしょうか」
『千載集』にある詞書によれば「旅宿に逢ふ恋」という題で詠んだ女性の歌です。
たった一夜の仮寝のために、それだけなのに、この先も恋い焦がれてしまうのか…
なんともロマンチック。この歌を読んで僕は『ビフォア・サンライズ』という映画を思い出しました。たった一夜一緒に過ごしただけなのに相手のことが忘れられなくなるくらいいとおしくなってしまう。よく大人になると純粋な恋愛が出来なくなると言いますが、いつまでも子供のころに持っていたような初々しい気持ちというのは大事にしたいものですね。
品詞分解(序詞・掛詞)は?
①難波江の(序詞)
難波江…固有名詞
の…格助詞
①から②の「難波江の芦の」までが「かりね」の序詞となっています。
②芦のかりねの(序詞)(掛詞)
芦…名詞
の…格助詞
かりね…名詞、「刈り根」と「仮寝」の掛詞
の…格助詞
①から②の「難波江の芦の」までが「かりね」の序詞となっています。
③ひとよゆゑ(掛詞)
ひとよ…名詞、「一節(節と節のあいだ。短いことのたとえ)」と「一夜」の掛詞
④みをつくしてや(掛詞)
み…名詞
を…格助詞
つくし…サ行四段活用の連用形
て…接続助詞
や…係助詞、疑問の意味
「身を尽くし」と「澪標(船の船行の目印に立てられた杭)」の掛詞
⑤恋ひわたるべき
恋ひわたる…ラ行四段活用の終止形
べき…推量の助動詞の連体形に
縁語は?
この歌では、「芦」「刈り根」「一節」「澪標」が「難波江」の縁語となっています。
参考文献
この記事は『シグマベスト 原色百人一首』(鈴木日出夫・山口慎一・依田泰)を参考にしています。
百人一首の現代語訳、品詞分解も載っています。勉強のお供に是非。