目次
はじめに
今回は百人一首No58『有馬山猪名の笹原風吹けばいでそよ人を忘れやはする』を解説していきます。
『有馬山猪名の笹原風吹けばいでそよ人を忘れやはする』解説
作者は?
この歌の作者は大弐三位(だいにのさんみ)(999〜?)。紫式部の娘、藤原賢子です。
意味・現代語訳は?
『有馬山猪名の笹原風吹けばいでそよ人を忘れやはする』の意味は以下のようになります。
「有馬山に近い猪名の笹原に風が吹くと、笹の葉がそよそよと音をたてる。さあそのことですよ、お忘れになったのはあなたのほう、私はどうしてあなたのことを忘れるでしょうか」
作者のもとへ通ってくることも途絶えがちになってきた男が、「あなたが心変わりしたのではないかと気がかりです」と言ってきたので作者が返した言葉。切れ味抜群。
品詞分解は?
①有馬山
有馬山の…固有名詞、現在の兵庫県神戸市北区有馬町あたりにある山
②猪名の笹原
猪名…固有名詞、猪名のともいわれ、摂津国猪名川に沿った平地。有馬山と猪名は一緒に読まれることが多かった
の…格助詞
笹原…名詞
③風吹けば
風…名詞
吹け…カ行四段活用の已然形
ば…接続助詞
④いでそよ人を
いで…副詞、勧誘や決意の意味は
そ…代名詞
よ…終助詞
人…名詞
を…格助詞
⑤忘れやはする
忘れ…ラ行下二段活用の連用形
やは…反語の係助詞
する…サ行変格活用の連体形、「やは」を受けて連体形になっている
修辞法は?
序詞
この歌では、『有馬山猪名の笹原風吹けば』の上三句が「そよ」を導くための序詞となっています。
掛詞
「そよ」が笹がそよぐ葉音の「そよ」と、指示代名詞「そ」(ここでは、作者の相手が「あなたが来てくれないので心変わりがしたのではないかと心配です」と言ったことを指します)+「れよ」の掛詞となっています。
参考文献
この記事は『シグマベスト 原色百人一首』(鈴木日出夫・山口慎一・依田泰)を参考にしています。
百人一首の現代語訳、品詞分解も載っています。勉強のお供に是非。