歌川広重の東海道五十三次No.6『戸塚 元町別道』解説~こめや?米屋?

はじめに

今回は歌川広重の東海道五十三次No.6『戸塚 元町別道』の解説をしていきます。

『戸塚 元町別道』解説

「左り鎌倉」

画面中ほどの青い石柱には「左りかまくら道」の文字が見えます。保土ヶ谷宿を後にして、ここを直進して橋を渡ると戸塚宿に入っていき、川沿いに左に進むと鎌倉に通じています。

「こめや」は「米屋」?

画面左側には「こめや」の看板が見えますが、これはお米屋さんではなく、実在した旅籠の屋号。

軒先には「大山講中」と書かれた木札が下がっていますが、講とは共通の信仰を持つ人々のサークルのこと。つまり、「大山講中」とはこの旅籠が大山石尊大権現(現在の阿夫利神社、神奈川県伊勢原市)に詣でる大山講の人々の指定休憩所だったということです。

顔の見えない男たち

画面左、馬からさっと男が降り、茶店の女が出迎えています。馬の右には馬子が後ろ向きに立ち、さらにその右では女が笠を取ろうとしています。顔の見えない男二人と、その左右で顔を見せる女が対称的な構図を構成しています。

物語へ誘うのは?

このように画面左側では人間のドラマが繰り広げられているのですが、その導入部となっているのは画面右の橋の上の男。鑑賞者の視点がこの橋の上の男の視点と重なり、「ちょうど橋を渡ってきたところでイベントを目撃する」というストーリーが組み立てられています。

現在の戸塚駅

参考文献

この記事は『謎解き浮世絵叢書 歌川広重 保永堂版 東海道五十三次』(町田市市立国際版画美術館監修 佐々木守俊解説)を参考にしています。

広重、東海道五十三次に興味ある方は是非。旅をしている気分になれますよ。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です